文部科学省の高校3年生への調査では、中学卒業程度の英語力も備えていない生徒が多く、特に「書くこと」と「話すこと」が極端にできないことがわかりました。

 かなり前ですが、英語を勉強しても「英語を話せない」ということで、オーラルイングリッシュの比重を高めた指導要領や教科書に変わりました。当時は「書くこと」はそれなりにできていたと記憶していますが、今回の調査では、できていた「書くごと」もできなくなってしまったことになります。

 言葉はまず音として耳から学びます。つぎに音として覚えた語を文字として書くことを学んでいきます。これが言葉や文を習う手順です。

 その手順を英語にあてはめてみましょう。単語や簡単な文を音として覚え、声にして話してみます(日本語では赤ちゃんから就学前の時期)。次に単語や簡単な文を書くことを練習します(日本語では小学校1年生から)。国語での漢字の書き取りや作文が続くのと同じで、英語でも勉強する限りこれは続きます。「聞ける」「話せる」は日本語では日常的に機会があるのに対し英語にはあまりないことが違いです。

 小学校英語が教科になることで、すでに英語を始めているお子さまも多いと思います。お子さまも英語をしゃべり”カッコイイ!”と自画自賛するかもしれませんが、いつまでも「聴く」「話す」の赤ちゃんレベルだけを続けるのはやめ、つぎの段階である「書く英語」に進んでください。「聞く」「話す」が英語のすべてではなく、英語の一部分でしかありません。中学、高校へ行けば間違いなく「書く英語」が80%を占めます。

 かつてこんなことがありました。新中学1年生の区立生14名が初めての定期テストを受けたところ、小学生の3年間英語を習っていたという子が唯一平均点以下の最下位でした。他の13名は中学生になってから英語をはじめた生徒でしたが100点を含め全員が平均点を超えていました。

 サッカー部にいたから「サッカーが上手い」とは限らないのと同様、英語を習っていたから「英語ができる」とは限りません。どんな英語をしてきたか、何を身につけてきたかを充分に精査する必要があります。

 小学生で英語を勉強してきたお子さまでも中学英語の質の違いに”カルチャー・ショック”を受けて、自信喪失や英語嫌いになる危険度は同じです。老婆心ながら、「中途半端な自信は持たず、初心者としての謙虚な姿勢」で日々取り組んでください。不幸の繰り返しを見ることは私達にとってもつらいことですから。